事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

ETCレーンでの停止車両に過失を認めなかった事例

事故の概要と経過

本件事故は、 午前7時頃、 高速道路を走行していた普通乗用自動車(A車)がET Cカ ー ドを挿入していなかったため当初は一般車両用レ ーンを走行していたが、 料金所の手前でETCカ ー ドを挿入し、 右隣のETC専用レ ーンに車線変更をして通過しようとしたが、 ETCゲー トの開閉バ ーが上がらなかったためA車が停止したところ、 A車に続いてETC専用レ ーンに進入した組合員車(B車)がA車に追突した対物事故です。本件交渉においては過失割合が争われ、相手方が訴訟を提起しました。

本件の争点

1.A車の一般車両用レーンから組合員車が走行してきたETC専用レーンヘの急な車線変更が車間距離を著しく狭くしたという事実があったのかどうか。
2.ETCカードをETC車載器に挿入せずに高速道路に人り、 出口側の料金所手前で挿人してETC専用レ ーンに急に車線変更して進行したことは過失を構成するのかどうか。
3.ETCレーンで急停車したことは過失を構成するのかどうか。

事故処理ノート画像
裁判所の判断

本件判決においては、 双方の位置関係等からA車の割込みの事実自体を認定せず、 ETCカ ー ドの未挿入については、 高速道路に入る前に挿入しておかなければならない法的義務はなく、 ETCカ ー ドを出口の料金所の手前で挿入したとしても、 ナビゲーションシステム画面にETCが利用できる旨の表示が出たことを確認しており、 急な車線変更の事実も認められないことからA車に過失は認められないとしました。 また、 B車は、 前方車(A車)がETCゲー トの開閉バ ーの手前で停止することを予見して前方を注視し、 減速、 車間距離保持を行うべき義務があったとしてB車の過失を認めました。

まとめ

この判決は、ETCレーン内で急停車した車に後方車が追突する事故については、料金所手前では車両が減速、停止することはありうる、という経験則から、高速道路での急激な停止の場合とは同一視できないという判例の傾向に沿ったものだといえます。なお、 本件については、 現在控訴して争 っています。