事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

全長の著しく長い車両は路外から道路に進入する際、より慎重に安全確認義務があるとされた事例

事故の概要と経過

本件事故は、 午後11時45分頃、 国道1号線沿いのコンビニ駐車場から組合員車(大型トレ ーラー ; A車)が道路に右折して進入しようとしたところ、 直進してきた軽自動車(B車)がトレ ーラーに衝突した事故です。 この結果、 相手方B車運転者は足関節開放性脱臼骨折等の傷害を負い、 入院治療の末、 10級の後遺障害が残りました。
本件交渉においては過失割合が争われ、相手方が訴訟を提起しました。

本件の争点

原告側(B車)の主張
A車は、 トラクタ部分5.6 m、 トレ ーラ一部分1 2. 5 m、全長1 5. 8 mの 長さをもつ車両であり、 衝突の際には既に、トラクタは対向車線に入っていたが、トレ ーラ一部分が進行車線を遮っている とは認識できなかった。 A車に安全確認を怠った重大な過失がある。
被告側(A車)の主張
B車の運転者は、 呼気1リットルにつき0. 3 2ミリグラムのアルコー ルが検出された酒気帯び状態で、 時速50kmの 制限速度の道路を時速70kmで走行していた過失がある。

事故処理ノート画像
裁判所の判断

本件判決においては、 A車は著しく長い車体を有し、 右折開始からトレ ーラー部分が完全に反対車線に入るまでに15から20秒かかるのだから、 こういう車両が路外から右折を開始するには、 通常の車両の場合と比較してもより慎重に左右の 安全確認をする義務があったにもかかわらず発進後は右方の安全確認をしなかった過失があると認めました。
他方、 B車には、 酒気帯びの過失、 制限時速を20キロ超過した過失などを認めました。 この結果、 過失割合はA車6 0 %、 B車 40%が相当と判断しました。

まとめ

本件の状況での基本過失割合はA車80 %、 B車20%です。
この判決は、 B車に酒気帯びと速度違反で30%の修正をしたものの、 A車に対しても、 全長の著しく長い車両は、 通常 の車両に比べて慎重に安全を確認する注意義務があるとして過失10%修正をしたものと考えられます。