事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

老夫婦の死亡事故につき高額の損害賠償が認められた事例

事故の概要

本件事故は、 午後1時40分頃、 信号機のある交差点において、 普通乗用車(A車)が青信号に従って交差点に進入したところ、 普適貨物自動車(B車)が赤信号を見落として交差点に進入したため、 双方が出会い頭衝突した事故で、この結果、 A車の同乗者2名(夫76歳、妻73歳)が脳挫傷によリ死亡しました。
その後、 本件事故は、 相続人よリ訴訟が提起されたものです。

裁判における争点|

1. 夫の分について、 原告1則は、 亡き夫は老齢厚生基礎年金のほか、 農業を営んでいたため、 農業収入分として平均賃金(賃金センサスによる)によリ算定した逸失利益あわせて2,168万円余を請求しました。 一方当組合1則は、 税務申告もしておらず、 収穫高も売上も不明であり農業収入が平均賃金程度あ ったとは認められない、 また、 同居親族や近所の親族がおリ、 遅常は農作業を共同で分担して行うと考えられるのだから、 亡き夫の寄与度に応じた収入を認めるべきであると主張しました。
2、 妻の分については、 主婦業を担っていたことから家事労働分の逸失利益の算定基礎となる平均賃金の根刻が争われました。

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裁判所の判断

1. 夫の分について、 同居家族は会社勤務しておリ、 農作業は主として亡き夫が行っていたこと、 収穫した農作物を家族等で消費している分もあることなどを認定し、 平均余命10年のうち5年間は平均賃金、 続く5年間は老齢基礎年金額を基礎収入額として逸失利益1,164万円余を認めました。
2、 妻の分については、 同居していた息子の妻は会社勤務をしていたことから、 亡き妻が中心的に家事を担っていたことなどを認定し、 算定の基礎収入額としては当組合主張の平均賃金を採用しました。

この結果、 夫の分については請求額4,968万円余に対し損害額3,364万円余 、また妻の分については請求額4,479万円余に対し損害額3,807万円余が認定され、 高齢者の夫婦であリながらも高額な損害額認定がなされるところとなリました。