事故処理ノート
事故事例や判例につき、組合員の皆さまの
ご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。
運転手が不明となった事故
- 事故の概要
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本件事故は、 組合員車が早朝に優先道路を走行中、 見適しの悪い交差点において、 左方向から一時停止せすに交差点に進入してきた相手車と衝突したものです。車同土の衝突の後、 交差点付近の家屋と薬局、 自動販売機に衝突しました。
- 問題点
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衝突した際、 相手車には3人が乗っており、 酒に酔った様子でした。 そのうち1人が、「運転手は車両を置いて逃走した。運転していたのは、 さっき居酒屋で知り合った人物で、 よく知らない」というようなことを言っていました。 警察が到着し、 相手車の3人を飲酒検査しようとしましたが、 事故現場に相手の知人が現れ、けが人を病院に連れて行くのが優先と主張し3人を連れ去ってしまい、 検査は出来ませんでした。
こういった稀有な経緯から、 相手車の連転手が不明ということで、警察で調査をすることになりました。 このような事故の場合、 組合員の運転手と相手車の運転手の共同不法行為となり、第三者の損害について連帯して損害賠償する義務を負います。 しかし相手車の運転手が不明となったため当方が窓口になり、 第三者の家屋、 薬局、 自動販売機の賠償について交渉し、 いったん損害金を支払うことになりました。

- 解決までの経緯
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事故日から6か月後に、 警察から組合員に、 調査の結果、 相手車を運転していた者が確定したと連絡がありました。 車内に残っていたうちの1人で、 「居酒屋で知り合った人物が逃走した」と申告した当の本人が、 虚偽申告をしていた運転手だった、 ということでした。
その後、 保険会社が窓口になり、 弁護土が介入し交渉することになりましたが、飲酒運転については基本現行犯逮捕であり、 検査ができていないため立証できず、過失割合には反映されませんでした。 最終的には組合員15%:相手方85%の過失割合で示談し、 第三者の損害額について、 相手方過失分の85%を回収することとなりました(車同土についても同過失割合にて解決しました)。
- ※注釈※
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※共同不法行為
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、 各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う(民法719条1項前段)。
共同不法行為と認められると、 共同不法行為者は、 被害者に対して、 連帯して損害賠償する義務を負います。つまり、 今回の例では、 組合員の運転手もしくは相手の運転手が被害者から請求されれば、 全損害を賠償しなければなりません(不真正連帯債務)。 なお、 被害者は、 どちらの運転手に対しても損害の全額を請求することができ ます。
今回の例では、 組合員(近畿共済)が被害者に対して損害全額を賠償したため、 相手の運転手に対して過失割合に応じた金額を請求いたしました。
※飲酒運転
何人も、 酒気を帯びて車両等を運転してはならない(道路交通法第65条)。
逮捕が現行犯で行われない場合、 運転手の酒気帯び状態や不安定な運転などの証拠が得られない可能性が高くなります。 また、 時間が経過することでアルコールが体内から排出され、 証拠の一部となる可能性も低下します。 そのため、 現行犯逮捕によって証拠を確保し、適切な刑事訴追が行われることが重要とされています。