事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

深夜に幹線道路の追い越し車線上を歩行していた男性と衝突した事例

事故の概要

本件は、台風接近に伴う雨天かつ、深夜に、組合員車が、中央分離帯のある幹線道路の第二車線を走行していたところ、進行方向の車線上に歩行者を認め、ブレーキを踏みながらハンドルを右に切って回避行動をとったものの回避しきれす接触し、その後、後続のバイクも同歩行者と衝突し、その結果、同歩行者が死亡したというものです。
事故後3年近く経過した後、被害者の相続人(以下、相手方)から、訴訟が提起されました。

訴訟の経過

相手方は、本件事故は被害者が帰宅途中に、道路を横断する為、中央分離帯を乗り越え、歩道に至る過程で発生したと考えるのが合理的であるとし、道路脇に歩道があり、かつ中央分離帯も人が容易に乗り越えられる程度の高さしかないため、組合員は歩行者の横断を予見すべきであった、と主張しました。また、本件事故現場付近の風雨はさほど強いものではなく、事故当時の視認状況はさほど悪かったとはいえず、組合員の脇見運転が大きな原因で被害者に衝突させたといえると主張しました。

これに対して当方は、目撃者の供述、防犯カメラ映像という客観的証拠から、被害者が道路を横断しようとしていたとは考えられず、本件事故直近に第二車線内を逆走するように歩行していたと主張しました。さらに、本件事故当時は台風接近に伴う雨天であり、しかも深夜であったため、視認状況としては、明らかに悪条件であり、その上で、反対車線との間に途切れることなく中央分離帯が続いていた幹線道路で、追越車線上を歩行者が進行方向反対側から歩いてくるなど極めて危険な行動であり、およそ予見することは困難である等主張し、本件事故については、相手方に大幅な過失相殺がなされるべきであると主張しました。

加えて、相手方には、組合員車両及び後続のバイクが加入する自賠責保険から保険金が支払われており、これらの既払い金を相手方の過失相殺後の損害額に充当すれば、全額補填されていることは明らかであり、相手方の請求は認められる余地がなく棄却されるべきと主張しました。

事故処理ノート画像
訴訟の結果

最終的には、被害者の損害は概ね自賠責保険金で補填されていると考えられ、裁判所からの和解案は、双方の責任割合には触れず、被害者が亡くなるという最悪の結果が生じていることから、解決金として当方および共同不法行為者とで100万円支払う、というものでした。
和解案に至る経緯を組合員に説明し、了解を得られ、和解に応じ、解決金として60万円を支払い、解決することとなりました。