事故処理ノート
事故事例や判例につき、組合員の皆さまの
ご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。
信号機のない交差点で右方向から進行してきた自転車との非接触事故
- 事故の概要
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本件事故は、組合員車が信号機のない交差点に差し掛かる直前、右方向から交差点に進入してくる相手自転車を発見しブレーキをかけ停止したが、相手自転車は止まり切れず交差点を過ぎたところで転倒し左肩腱板断裂負傷したもので、双方非接触の事故でした。
- 訴訟までの経過と本件の争点
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相手方は、治療終了後提訴し訴訟になりました。本件の主な争点は過失割合でした。
相手方の主張は、交差点手前の一時停止線で自転車から降り左方向を確認しようとしたが十分に確認することができないため、再び自転車に乗り確認できるところまで微速前進したところ、目の前に近づいてきた組合員車を発見し咄嗟にブレーキをかけハンドルを切って回避したものの転倒し負傷した。したがって、本件事故は組合員車が前方注意義務を怠ったことにより発生したものであり、全責任は組合員にあると主張しました。
- 裁判上での当方の主張
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これに対して当方は、相手方主張通りに交差点手前で一旦自転車から降り、再び微速前進したのであれば、転倒地点までは達しないと考え、それを証明するため当組合職員が事故現場で実際に自転車に乗り、自転車の動きを再現したビデオ動画を二通り作成しました。一つは、交差点手前で一旦自転車から降り、そこから再び発進した場合、もう一つは、一旦停止をせずそのまま交差点に進入した場合です。
この二通りのビデオ動画を作成したことにより、交差点手前で一旦自転車から降り再び発進した場合は速度も出ず、ブレーキをかければ転倒地点まで達しないことが明らかとなりました。つまり、相手方は一旦停止をせずそのまま交差点に進入した可能性が大きいことが確認できたのでした。当方はこのビデオ動画を証拠として裁判所に提出しました。
- 裁判所の見解
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訴訟では双方の意見がぶつかり合うものの、裁判官も当方の主張を認め、「相手方は適切なブレーキ操作、ハンドル操作をしておらず過失の程度は大きい。それに対し組合員は、交差点の手前で停止し、しかも相手方とは接触していない。これらを総合的に考えると相手方の過失の方が大きいと言わざるを得ない。」とし、過失割合は相手方7割、組合員3割が相当との判断をしました。