事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

軽微な物損事故での人身損害請求にご注意ください。

事故の概要

本件は、組合員車が狭い住宅道路において信号待ちしていた相手方乗用車とすれ違いざま、組合員車の右後部が相手方車の右フロントミラーと接触した事故です。

本件の経緯

(1)人身事故対応になるまで
事故後には怪我が無いとの報告を受けて、軽微な対物損害のみの示談交渉をしていたところ、事故から約2週間後に相手方より、運転者と同乗者全員が通院したいとの連絡があり、運転者は首、肩および手のシビレが事故時から存在するとの訴えがありました。
それまで、対物損害についての示談折衝中に、相手方から車輛価格落ち損の請求があったのですが、当方は、相手方車の購入から10年程経過していたため請求を否認したところ、急に人身損害の請求があったものです。

(2)人身損害請求後から解決まで
当方は、事故から初診に至るまで空白期間があること、対物損害に関する示談折衝時の対応、受傷機転(いつ、どこで、どのように怪我をしたか)に関して疑義があること、その後の相手方の対応(1か月後には指輪が曲がりダイヤの部分が紛失したと請求)などを総合的に勘案して、弁護士に委任を行い、人身損害は認められず賠償請求に理由がないとして、当方から債務不存在確認訴訟を提訴しました。
提訴後ほどなくして相手側より人身損害請求を取りやめるので訴訟取り下げしてもらいたいとの連絡がありました。そして「本件事故による人身損害及び損害賠償請求権は発生していない」旨の示談書を取り交わすし、解決となりました。

事故処理ノート画像

まとめ

軽微な対物事故における人身損害に関する過去の判例においては、「軽微な衝突だからといって必ずしも事故と傷害との因果関係が否定されるわけではない」という判例がある一方で、「医師が作成する診断書のみでは、必ずしも受傷を裏付ける証明とはならない」すなわち事故と傷害との因果関係があるとは言えないとの判例もあります。

本件は、人身損害を認めないケースでした。
このように、不当な要求から守るためにも事故当初の正確な損害確認が重要になってきます。組合員の皆様方におかれましても、事故現場等で被害物件の確認や相手方の怪我の有無の確認など可能な範囲で行っていただけましたら、その後の交渉にも役立てさせていただきますのでよろしくお願いいたします。