事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

ガソリンスタンド従業員が組合員車のタイヤ空気充てん中の破裂で死亡した事故

事故の概要

本件は、組合員車が給油のために立ち寄ったガソリンスタンドにおいて、タイヤの空気が抜けていることに気付いたガソリンスタンドの従業員が善意から空気充てんを申し出て作業を行ったところ、タイヤに損傷があったため突然破裂し、その衝撃によって男性従業員1名が死亡した事故です。

タイヤ空気充てん作業は、本来、安全囲いに入れたうえで作業を行うべきところ、それを行わず車両からタイヤを取り外さずに作業したため、この事故が起きてしまいました。
なお、事故の際、作業員の隣にいた組合員運転者は無事でした。

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本件の問題点と解決までの経緯

被害者遺族(原告)は組合員および被害者の雇用主であるガソリンスタンドに対して、約6,800万円(慰謝料2,800万円、逸失利益約3,400万円、葬儀費用約200万円、弁護士費用400万円)の損害賠償請求訴訟を提起しました。

原告は、ガソリンスタンドに対して、危険な業務であるにもかかわらず事故防止策を十分に講じておらず、安全配慮義務違反により事故が発生した過失、組合員に対してはタイヤに損傷のある状態であったこと、および被害者に空気充填作業の指示を行い、本件事故が発生した過失を主張しました。

当組合側は、被害者に作業を指示した事実はなく、被害者が善意で申し出て行ったものであること、タイヤ購入時から事故までの日常点検等を行っており、タイヤの管理について過失はなかったことから、今回の事故について組合員側に賠償責任はない旨を主張しました。また被害者本人にも、行為の危険性を認識しながら自ら本件タイヤに空気を入れるという非常に危険性の高い行為を行った過失があると主張しました。

訴訟については、主に原告がガソリンスタンドの責任を追及し、裁判官がガソリンスタンドに対して釈明を求める流れで進み、最終的には裁判所から、被害者の過失相殺を認めたうえで、責任割合や損害認定の内訳を示さずに、被害者の雇用主であるガソリンスタンドが3,300万円、当組合が和解解決金として100万円を支払うという和解案が出されるところとなりました。

当組合では、顧問弁護士と相談した結果、今回の事案は、自動車が運行の機能を完全に停止させている状態での事故であり、自賠責保険の「運行」に起因して発生した事故ではないため、自賠責保険の適用対象外となりましたが、共済契約自動車の管理責任にあたるとして和解に応じ、解決金として100万円を支払いました。

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