事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

高速道路上で高額な医療機器積載車両に追突した事案

事故の概要

本件事故は高速道路上において、渋滞車列の最後尾に停車中の精密機器を積載した相手方車に組合員車が追突した事故です。

本件の問題点

積荷の精密機器は、大学病院の研究室が、所有者である精密機器メーカーに特注依頼した医療用内視鏡の試作品でした。損害賠償交渉の窓口となった相手方運送会社は、長年そのメーカー専属の運送会社として事故の対応やその他クレーム業務を全て請け負っているとのことでした。

損害確認及び示談交渉のため、相手方運送会社に出向いたところ、「積荷の損害については、精密機器であり修理対応では到底納得できない。速やかに新品での賠償、及び再製作にかかる遅延損害、迷惑料等の請求を即了承願いたい。」と強硬に迫られ、「共済組合が了承するまでは帰さない。」と、担当者は軟禁状態におかれました。

相手方の請求額が1千数百万円と非常に高額で、かつ無理難題の主張であったので、当組合が妥当な賠償金額を算定するため損害調査をしたいと申し出たものの、にべもなく拒否され、また組合員にも同様に請求をしてきたことから、当組合顧問弁護士に委任することにしました。

事故処理ノート画像
解決までの経緯

顧問弁護士と事案の方向性について協議した結果、実際の所有者である精密機器メーカーの意向を確認すべきではないかとの結論に至り、謝罪も兼ねて共済担当者と損害調査の鑑定人が東京のメーカーを訪ねたところ、メーカーの担当者は「今回被害を受けた機器はあくまで試作品であり、金銭的価値に換算することはできない。まずは実際に損害が発生しているのか検査をした上で相談させてもらいたい。」と常識のある回答がありました。

後日、メーカーから「検査の結果、異常は無かったので、今回の事故の損害賠償として、ケース等の破損品と検査費用のみ請求させてもらいたい」との連絡があり、事なきを得ることができました。

本件事故の教訓

本件の事故自体は単純な追突事故でしたが、相手方トラックが高額な医療機器を積載しており、かつ相手方窓口が強硬な対応に出るなど当初は損害額全体を見通せませんでした。

しかし弁護士に委任し、事案整理することによって、被害者側からも冷静な対応を引き出すことができ、また担当者が東京まで出向き、真正面から謝罪することでメーカー側にも誠意が伝わった結果、最終的に円満な解決に導くことができました。

最後に組合員の皆さまにも万全を期すため、対物共済金額の増額をお勧めいたします。