事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

幹線道路の追い越し車線を走行した中学生の自転車に追突した事案

事故の概要

本件事故は、学校の夏休みに早朝の海を見に行こうと、中学生数人が自転車で夜間の海岸沿いの幹線道路を走行中、二人だけが左端ではなく追い越し車線を走行していたところ、後続走行してきた組合員車が、左側走行の自転車には気が付いていたものの、道路がカーブしていたことと、スピードも制限速度を20km程超えていたことにより、前方走行の2台の自転車に追突し、内1台の被害者を轢いてしまった事故です。

被害者である15歳の男子中学生は、神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し、常に介護を要し、右足の膝関節以上の切断、右目の失明など後遺障害1級が残りました。

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本件の問題点と解決までの経緯

過失割合の争いがあり、高額損害となることから、相手方は弁護士に示談交渉を委任し、当方も顧問弁護士へ委任しましたが、折衝は決裂し、相手方は約2億8千万円程度の損害賠償を求めて訴訟を提起しました。裁判においては、夜間の幹線道路の追い越し車線を自転車で走行していた相手方の過失割合と将来の介護費用が大きな争点となりました。

まず過失割合については、相手方は無過失を主張しましたが、当方は、夜間の幹線道路を車道の左端ではなく、追い越し車線を走行していた事実から、相手方に少なくとも50%の過失があると主張しました。次に、将来の介護費用の請求について、相手方は、昼と夜の交代で24時間付添介護が必要であるといして請求してきました。そこで、当方は、事実等の確認をするために病院から、診療録や看護記録他の記録を取り寄せしたうえで、母親による介護で足りると主張しました。

そして、訴訟提起より約1年後、裁判所より和解案が示されました。和解案は、過失割合について、判例をもとに相手方の過失を40%とし、将来の介護費用については、67才までは母親による介護費用、それ以降は本人の平均余命まで職業介護人の費用を認定しました。
その結果、相手方側は和解案を受諾し、遅延損害金を含んで1億3,500万円の認定額となりました。

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