事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

高速道路追突事故で2億4千万円の損害賠償となった事案

事故の概要

本件事故は、夏の深夜1時頃、組合員車が高速道路を走行中、眠気があったが、配送に遅れないように、無理に走行を続けた結果、居眠り運転により、大幅な制限速度超過となる時速110キロで、前方を走行中の相手車に追突し、横転させたものです。相手方は、夏休み最後の家族旅行の帰りで4人家族が乗車していました。妻と小学生および幼児の3人は、後部座席をフルフラットにして仮眠中だったため、衝撃で車外へ放り出され、重体となりました。特に、妻は脊髄損傷、四肢麻痺などで常時介護を要する後遺障害(1級1号)が残りました。

本件の争点と交渉経過

相手方は弁護士に示談交渉を委任し、訴訟が提起され、妻の損害について4億2千万円余の損害賠償請求がされました。本件の争点は、過失相殺とともに、夫が妻の付添のために失職したことを休業損害と認めるのか、後遺障害確定後の介護費用やリハビリ費用、そのための転居費用を相当因果関係のある損害と認めるのかなど多岐にわたりました。

過失相殺について、当方は、同乗者3名はシートベルトを装着せず、後部座席をフラットにして横になっていたため車外に投げ出されたものであるとして3割の過失を主張しましたが、裁判所は、トラックが速度超過により相手方軽乗用車に追突して横転させたものであり、過失相殺を認めませんでした。また、夫の失職や休業損害については、相手方は妻の損害賠償分ではなく夫の損害分として請求しました。当方は、これは妻の付添看護であると主張したところ、裁判所の和解案は、夫の失職や休業損害を独自に認定せず、妻の付添看護料として認定しました。

また和解案は、高額な慰謝料(本人慰謝料3,000万円、家族慰謝料700万円)を認定した一方で、介護費用については、相手方請求額(約1億9,460万円)の45%程度(8,620万円)、症状固定後のリハビリ費用については、請求額(約5,475万円)の10%程度(約450万円)の認定としました。当方は、この額は自宅改造費として認定される範囲内と考えて,総合的に判断して、和解案を受け入れました。
この結果、妻の損害賠償認定額は、自賠責保険金4,120万円を含んで約2億4,200万円となりました。

事故処理ノート画像

まとめ

本件は、高速道路上での追突ですが、被害者に非常に大きな後遺障害が残存し、一家の人生を狂わせた事故となりました。また、組合員運転者には、禁錮1年2カ月、執行猶予4年という重い刑事罰が下されました。 
民事訴訟においても4年間という長期にわたる審理が行われ、証拠や主張等の書類合計200部以上にもわたる非常に難解な訴訟となり、高額な損害賠償金額が支払われることになりました。