事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

被害者の精神的な素因が損害額を拡大したとして争った事例

事故の概要

本件は、平成16年、片側3車線道路において相手方普通乗用自動車が転回するため減速していたところに組合員車両が追突し、相手方と同乗者が負傷した事故でした。




本件の経緯

相手方は、右腕神経叢損傷 (注 1) を負い、右手指関節に重い麻痺の後遺障害が残ったと訴えましたが、自覚症状を裏付ける客観的な所見が認められず、自賠責保険の後遺障害として認定されませんでした。相手方は異議申立を数回行い、14級10号(局部に神経症状を残すもの)に該当すると認定されましたが、納得せず、後遺障害等級8級に該当すると主張し、平成22年に既払額以外に7,338万円を請求する訴訟を提起しました。

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本件の問題点と裁判の結果

主な争点は、相手方の主張する症状及び後遺障害と事故との相当因果関係や、相手方本人の素因による寄与度減額 ( 注 2 )でした。

当方は、相手方車両の同乗者は通院期間2週間の軽症という事故だったのだから、相手方の負傷程度も頸椎捻挫であり、検査結果などから考えても右腕神経叢損傷が発生したとはいえない。相手方の麻痺症状は外傷性のものではなく精神的な原因により発生する症状であり、その原因は相手方の精神的な素因にあると反論しました。
訴訟は、双方が協力医に依頼した意見書が提出され、医学的論点についての応酬が繰り返される展開となりました。

その結果、事故からは10年、訴訟に4年を要しましたが、平成26年に裁判所から和解勧告がありました。その内容は、相手方の後遺障害等級を14級と限定し、当方の主張内容がほぼ認められたもので、既払金のほかに金320万円で解決することができました。