事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

接触がない事故における過失割合について

事故の概要

本件事故は、片側2車線道路の左車線に駐車していた組合員車が発進する際に、後方から接近してきた相手方バイクを発見したため、バイク側の車線に僅かに車体を入れて停車したところ、相手方バイクが危険回避のため右にハンドルを切り転倒し、相手方が負傷したものです。相手方は、右肩関節腱板損傷により約10ヶ月間治療を受け、後遺障害(第10級 10号)が残りました。


本件の問題点

本件については、組合員車と相手方バイクの接触がない、いわゆる「非接触事故」でした。
したがって、過失割合が争点となりました。
組合員側は双方の接触がなかったのだから、相手方の速度超過が転倒の原因だったとして 相手方50%の過失を主張しました。一方、相手方は、組合員車が進路を妨害したことが主たる原因であるとして過失があっても10% であると主張しました。

事故処理ノート画像
示談交渉の経緯

リサ ーチ会社による調査結果や実況見聞調書を確認し内容を検討したところ、基本的な過失割合は、組合員側80%、相手方20%と考えられました。また、判例によれば、接触の有無だけで大幅な過失割合の修正が難しいことが分かりました。

交渉にあたっては、組合員の意向を尊重し、当初、相手方の過失割合50%を主張しました。その結果、対人賠償については自賠責基準で、傷害分約117万円、後遺障害分461万円の 約578万円で解決に至りました。対物賠償については、当方65%:相手方35%にて示談解決に至りました。

まとめ

非接触事故について「当たっていないのだから悪くない」という印象が先行します。しかし、非接触の事実自体は結果論であり、事故の原因による過失相殺に影響を及ぼすものではありません。非接触事故であっても、原則として『判例タイムズ』等の事故類型ことの過失割合(基本割合)をベースとした損害賠償責任が発生します。その上で、被害者の事故回避措置が適切だったのかどうかという点を具体的状況に応じて判断されるべきものでしょう。この事案は、「ただ単に接触しないよう気をつける」だけではなく、「非接触を含め、事故原因を作らないよう気をつける」ことが求められることを再認識させられる事案でした。