事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

外国人留学生の後遺障害の賠償事例

事故の概要

本件事故は、深夜、組合員車が片側2 車線の道路を走行中、信号の無いT字路から飛び出してきた無灯火の自転車に接触し、相手方がくも膜下出血、右目眼球破裂、顔面骨折などの重傷を負ったものです。


本件の問題点

本件の問題点は、①相手方がアジア圏の国の外国人留学生で、日本語が不自由であること、②相手方にも相当の過失があるが、社会保険に未加入であるため治療費も過失相殺されるということ、③今後の治療をどこで行うかということ、④後遺障害の逸失利益分の賠償金額の算定の 4 点でした。

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示談交渉の経緯

まず、交渉については、相手方出身国の大使館を通じて弁護士が介入したことからスムーズにすすめることができました。治療費については、病院に何度も出向いて折衝を重ね、社会保険診療並みの治療費に減額してもらうことができました。

治療については、母国で行うか、あるいは日本で行うかの結論を出すのが難しい状態でありましたが、早急に治療を終了し、症状固定としたところ、併合で6級(片目失明で7級、神経系統の機能障害9級など)の後遺障害が確定しました。

当方は、賠償金額の算定に当たって、相手方は留学生であり今回の事故が無くても卒業後日本国内に長期間とどまる蓋然性が低く、国内賃金計算をベースにすることは出来ないとの主張を当初から提示していました。交渉の結果、判例などを考慮して最初の2、3年間を日本国内の賃金、それ以降をその3分の1をベースに算定することで合意に至りました。これにより、後遺障害の逸失利益は、国内賃金ベースの計算では約6,000万円になるところを約2,500万円となりました。また、過失相殺の結果、自賠責保険支払金額1,416万円以外に約300万円の共済金を支払うことで示談解決となりました。

本件では、多くの問題点がありましたが1つ1つ丁寧に問題点を分析し、本来対立関係にある相手方と信頼関係を築き、お互いに協力、譲歩しながら、どうしても譲歩できないところは折衝を繰り返すなどして解決することができた事案でした。