事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

小規模法人代表者の損害認定

事故の概要

本件事故は、午前 11 時頃高速道路料金所手前において、U ターンをしようとする組合員車(A 車)が、後方より走行してきたバイク(B 車)と接触し、B 車が転倒し、B 車運転の男性(57 歳)が負傷した事故です。

示談交渉の経緯

本件については、双方が走行中の事故であり、相手方の過失を主張し、相手方に健康保険を使用して治療を受けてもらいました。傷病名は、足関節内果骨折・外傷性反射性交感神経性萎縮炎で、約15ヶ月の入通院治療の結果、片足の踵(かかと)部分の骨折は癒合したものの、癒合した骨折部が萎縮するという珍しい症例で、歩行の度に痛みが出るという後遺障害が残り、12級7号に該当しました。

示談交渉では、①過失割合、②休業損害・逸失利益における年収と喪失期間が争点となりました。相手方は、小規模法人(貿易会社)の代表者でしたが、妻と2人で会社を営んでおり、実態は自営業者に極めて近いものでした。事故前年の決算報告書では、売り上げが約1,100万円あるものの、赤字申告でした。結果的に、交通事故紛争処理センターでの話し合いとなりました。

相手方の主張は、①過失割合について、高速道路料金所手前はUターン禁止なので相手方は無過失である、②休業損害・逸脱失利益における年収・喪失期間については、裁判基準並みの年収約487万円・喪失期間11年、というものでした。

これに対し、当方は、①実況見聞調書をもとに「高速道路料金所手前がUターン禁止でない」こと、料金所手前は車線変更が起こりうる場所であり特別に注意が必要であることから、相手方の過失を主張しました。また、②赤字申告であることから休業損害・逸失利益における年収・喪失期間ついても更なる減額を求めました。

その結果、①過失割合は相手方が10%とし、②休業損害における年収を約317万円、逸失利益における年収を約432万円、喪失期間を8年とする内容で示談解決できました。当初の相手方請求額より約397万円少ない示談額となりました。

本件は、相手方の主張、請求額を鵜呑みにすることなく、粘り強い交渉が実を結んでの示談解決事案です。交通事故紛争処理センターにおけるあっせん案は、弁護士基準に基づくため、通常は高額となりますが、その中での交渉がいかに重要であるかということを再確認させられる事案でした。

事故処理ノート画像