事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

当初の事故状況報告に虚偽があった事例

事故の概要

本件事故は、午前 6 時頃信号のある交差点において、片側 1 車線の道路を直進中の組合員車(A 車)が、赤灯火の対面信号にもかかわらず交通閑散で大丈夫だと誤った判断をして交差点内に進入したため、右方より青信号で直進してきた二輪車(B 車)と衝突し、B 車運転の男性(40 歳)が死亡した事故です。

示談交渉の経緯

本件については、死亡事故であり相手方の証言が聴取できないことから、当方は、組合員運転者が青信号にて交差点に進入したとの証言にもとづき、詳しい事故原因調査及び検察庁より交通事故実況見分調書を取得の上、相手方の過失100%として処理を進めていくという方針にてすすめることとしました。

死亡した相手方は年老いた母親と二人暮しで、婚約者がいる男性でした。組合員社長は、相手方遺族や婚約者の悲しみを慮り、通夜・葬儀参列の後も定期的に面談を繰り返していました。

ところが事故より約1年経過した頃、組合員運転者の証言が虚偽で、組合員車の信号無視による事故であったことがわかりました。再度、検察の実況見分が行われた結果、組合員運転者は起訴されました。示談交渉については、過失割合が組合員車側100%に逆転したこと、および、保身のために虚偽の供述を行い、一年もの間事実を話さなかったことに対する相手方遺族の憤りから、交渉は困難を極めました。一方、組合員運転者の刑事訴訟代理人弁護士より、判決日までに示談を成立させてほしいとの強い要望がありました。

そこで、組合員社長と共済担当者が幾度と無く相手方遺族を訪問して交渉を行うとともに、組合員社長は謝罪を続けました。その結果、損害賠償については当組合が提示した賠償金額で合意することができました。しかし相手方遺族は判決前の示談書への署名捺印については納得せず、公判の中で、示談は成立していないものの、賠償額については合意に達しており、判決確定後に示談書に署名捺印することを、証言してもよいとの連絡を頂きました。

その結果、裁判では、組合員運転者には懲役1年8ヶ月 執行猶予5年の判決が言い渡され、この判決確定後、示談成立となりました。

本件は、組合員運転者の虚偽の事故報告があったものの、その後、迅速かつ誠実に対応した組合員と共済が連携することにより円満に示談解決できたものです。

事故処理ノート画像