事故処理ノート
事故事例や判例につき、組合員の皆さまの
ご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。
双方の主張する事故状況に相違のある事例
- 事故の概要
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本件事故は、7 月末の午前 4 時 30 分頃 片側 1 車線・追い越し禁止道の国道で、交差点を過ぎた地点で先行する相手車(A 車)が一旦停止。後続の組合員車(B 車)が対向車線に進路変更し、追越しを開始したところ相手車が右側の路外へ出る為に右折を開始し衝突したものです。
- 争点
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本件については、過失割合が主な争点でした。相手側は「対向車線側の路外へ出るために一時停止したところ、後方から組合員車に追突された事故である」として無過失を主張。損害については車両全損時価として市場最高値の41万円の請求がありました。それに対し当組合は、停止した相手車両を対向車線に出て追越しをしようとしたところ、相手車が前方に遮るかたちで進行してきたもので、相手方にも少なくとも同程度の過失が発生すると主張しました。双方の主張に大きな隔たりがあることから、相手側保険会社との交渉は難航し、交渉は平行線のまま合意が得られませんでした。
- 当組合の対応
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事故状況の争点より当組合は組合員の原因調査への協力を依頼し運転手に状況を聴取。また、車両の損害確認を経て事故解析調査を行いました。相手車の右後部タイヤホイールの損傷が円弧にそった擦過痕である事に着目。これは相手車が停止している状態では線状の損傷面となる為、走行をしていたものと想定されるものです。
- 少額訴訟
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折衝では合意が得られず、相手は少額訴訟を提起し、簡易裁判所で解決を図ることになりましたが、結果、当組合の主張が考慮され、過失50:50。また相手の損害認定額も市場の平均値である車両費315千円と裁判所から和解案が提示され、合意となりました。
まとめ
本件事案は、双方の主張する事故状況に相違がありましたが、相手車の擦過痕を解析することによる物的な証拠が決め手となり、組合員の主張が正しかったことが裁判所でも認められ、解決となりました。運転者が主張する事故状況は、思い違いや感情が入ってしまうことがありますが、組合員との連携、及び車両や現場に残された痕跡等の物証から事故原因を究明できた一例です。