事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

学童(小4)の死亡事故例

事故の概要

本件事故は、午後2時頃信号のある交差点において、組合員車が片側2車線の道路を直進中に、左方から横断歩道を自転車に乗って横断していた小4女児(10歳)の発見が遅れ、対面の赤信号に気づかないままノーブレーキで同人を自転車もろとも跳ね飛ばして路上に転倒させた事故です。女児は、病院に運ばれたものの脳挫傷により約1時間後に死亡しました。

示談交渉の経緯

本件は、組合員運転者の前方不注意による信号無視が原因であり、過失割合は、当方100%過失の事故でした。組合員運転者には、執行猶予のない懲役2年の判決がありました。

死亡した女児は、一人っ子で、両親が共に40歳を超えてから初めて生まれた子どもであり何より重宝として育てられ、医師を目指すべき英才教育を受けていました。愛児を亡くした両親は当初、加害者側に対し通夜や葬儀の参列、面談も拒否しましたが、その後、組合員社長は月命日の度に毎回のように相手方宅を訪問し弔意しました。

示談交渉については、事故の3か月後から当組合の担当者が遺族宅を訪れて開始しました。交渉の争点は、逸失利益と慰謝料でした。逸失利益については、年収基礎を日弁連の損害賠償額算定基準(赤本)の賃金センサスを採用して年額486万円とし、生活費控除率は50%、就労可能期間49年で金2,989万円を算定しましたが、相手方は生活費控除率30%での4,184万円を要求しました。また、慰謝料については、相手方は3,000万円を請求し、当方は金2,400万円を回答しました。その結果、回答額に不満な相手方は弁護士に委任しました。その後、当方も顧問弁護士と相談のうえ、請求総額7,315万円に対し、最終的に金5,500万円を回答しましたが、和解できないまま相手方は民事訴訟の方向での検討に入りました。

ところが、相手方弁護士から、事故から丸2年目の三回忌にあたる日までに示談解決して墓前に報告したいとする遺族の心境の変化があったとして、当方回答額の示談総額金5,500万円(自賠責含む)を受け入れるとの連絡があり、運転者本人の署名・捺印を求めたうえで示談することができました。本件は、誠実に対応した組合員と共済が連携することによって、民事訴訟に至らずに相手方弁護士と示談解決できたものです。

事故処理ノート画像