事故処理ノート

事故事例や判例につき、組合員の皆さまのご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。

停止していた車の下で横臥していた人を轢いた事故で、過失割合が争われた

事故の概要と経過

本件事故は、12月下旬の午前3時2 0分頃、自動車通行量が極めて多い片側3車線の道路に合流しようとする1車線との間に設けられたセブラゾー ン内に停車していた組合員車が発進する際に、横臥していた男性(25歳、会社員)を礫過し死亡させたものです。本件交渉においては、相手方が訴訟を提起しました。

本件の争点

本件訴訟では、主に過失割合が争われました。原告(死亡男性の遺族)側は、被害者が 組合員車の前に密着するように立ってい たところ、発進した組合員車が衝突し、 車両の下部に巻き込まれ左後輪によって 礫過されたものと考えられ、事故直前の 携帯電話での会話等から意識ははっきり しており、酪酎状態ではなかったと主張 しました。
一方被告(組合員車)側は次のように主 張しました。本件事故は冬の真夜中であ り、発生場所は人の歩行が禁止され、急な斜面の土手の上で金網もあり人が容易 に入れないところであるから、人が入っ てくることを予想できるような場所では なかったこと。被害者は、組合員車両の 真下に横臥していたか、そうでないとし ても車両前部のバンパ のすぐ前あたりに横臥していて、運転席からは死角に入 っていたと認められ、停止中はエンジン もかけていたのだから、その車の下に寝 るのは自殺行為というほかないこと。運 転者は、30分の休憩後、前後の状況を 確認したうえで発進したこと。したがっ て、本件の状況において、車の真下に横 臥している人がいることまで予見し注意して運転する義務はないというべきであ り、事故原因は、酪酎して自殺行為とい うべき状況に身をおいた被害者にあるべ きであると主張しました。

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裁判の結果

実況見分調書や鑑定書、証言等の結果、 運転者は被害者の存在に全く気づかない まま発進したのであり、本件事故は被害 者が被告車の真下に入り込んでいたか、 そうでなかったとしても、被告車の直前で、運転席から見え難い場所に横臥して いるところを組合員車に礫かれたものと 認められました。その上で、運転者は発 進させる前に、周囲の状況をよく確認し ていれば被害者の存在を認識することが できなかったわけではないとして、組合員車と被害者との過失割合を6 0対4 0 と認定しました。
この判決に対し、当方は、第一審判決は双方の過失の内容や程度についての認 定が正しくされていないとして控訴し、 類似裁判例を提出するなどして争った結 果、高裁裁判官から、走行中に横臥している人を礫いた場合よりも、相手側の過 失は重い、運転者が車から降りてまで周りを見る必要まではないと思う、との意見で、組合員4 0対相手方6 0という過 失割合で和解案を提示し、双方が受け入 れて解決となりました。