事故処理ノート
事故事例や判例につき、組合員の皆さまの
ご参考になる特徴的なケースをご紹介しております。
5年以上にわたる長期治療で遅延損害金が1,000万円
- 事故の概要
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本件事故は、午後5時頃、荷物の積込みを終えた組合員車が工場から片側1車線の道路に進入し
1車線を横断しながら右折しようとした際に、左方から走行してきた自動二輪車と衝突し、二輪車の運転者が路上に跳ね飛ばされ重傷を負わせたものです。この事故で、相手方運転者は右大腿骨開放性骨折、右膝前十字靭帯断裂、頚椎脱臼骨折および頚髄損傷等の傷害を負い、約7か月の入院と5年の通院治療を行ったものの、上下肢のしびれや感覚低下などの神経症状、脊柱の変形などの後遺障害が残り併合で第8級の後遺障害等級認定を受けました。本件は、後遺障害確定後、訴訟となり7,000万円余と遅延損害金の請求がなされました。
- 裁判の経過
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本件は、組合員車の過失が大きい事故であり、裁判では損害額の認定が主要な争点となりました。とりわけ、治療期間が5年8か月と長期にわたったことから傷害慰謝料、また併合認定された後遺障害の逸失利益の損害額認定が争われました。
本件の治療が長期に及んだのは、当初受けた手術の際に感染症に感染してその後数度の入院を繰り返したことと骨癒合に時間を要したことによるものでした。また被害者は、私立女子高校の体育教師で職場復帰後は春夏の休み以外の通院がほとんどなかったため、実際の通院日数は著しく少ないものでした。そこで、相手方の傷害慰謝料の請求額550万円に対して、当方は300万円程度を主張しました。
また、後遺障害の逸失利益(後遺障害がなければ得られたはずの収入)については、併合前の9級での喪失率を主張しました。
- 裁判の結果
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双方の主張がなされた後、裁判所から当方の主張に近い損害額の認定で5,600万円の和解勧告が出され、折衝の結果弁護士費用と遅延損害金を含めて6,000万円で和解しました。
しかし、本件は上記のとおり特殊な事情があり長期にわたったことから、遅延損害金として、総期間(治療期間と症状固定から和解までに要した期間の合計)8年4か月のうち5年分に限定されたとはいえ1,000万円余の支払となりました。