交通事故の責任
交通事故を起こして、他人に人的・物的な被害を与えた場合は、加害運転者には次の4つの責任が問われることとなります。
民事責任
加害運転者は、被害者の治療費や休業損害、壊れた車の修理代などの損害を賠償する責任を負うことになります。
これは、民法の不法行為責任を定めた規定にもとづいていますが、同法はさらに従業員の起こした交通事故の賠償責任は企業にも及ぶとしています(詳しくは別項を参照してください)。
こうした損害賠償責任のほとんどは、自動車共済(自賠責を含む)によりカバーされますが、中には共済金額を超えるような高額事故を起こした場合には自己負担となってしまいます。
- 損害賠償責任を定めた法律
- 民法第709条は、故意または過失によって他人に損害を与えたものは、その損害を賠償する責任があると定めています。これは、運転者にかかってくる責任です。
さらに、民法第715条では、被用者(従業員)が業務従事中に他人に損害を与えたときは、企業が損害を賠償する使用者責任があると定めています。
ただし、対人事故の賠償においては、民法に優先して自動車損害賠償保障法(自賠法)が適用されます。
自賠法では、賠償責任は運行供用者が負うことになっています。
運行供用者とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」で、自動車の運行を支配し、その運行が自分の利益になる者を指します。
この運行供用者責任により、企業が賠償責任を負うことになります。
刑事責任
傷害事故や死亡事故を起こすと、刑法により自動車運転過失致死傷罪などの罪に問われ、図のような流れで処罰を受けます。また、酒酔い運転や制御困難な高速度運転、危険な速度での信号無視などの悪質違反運転により死傷事故を起こした場合、危険運転致死傷罪が適用され、死亡の場合は、1年以上の有期懲役で、最長20年の懲役を受けることになります。

- ひき逃げ、当て逃げなどの悪質な違反や重大な死亡事故の場合、身柄を拘束された強制捜査となる。
- 不起訴は無罪と同じではない。不起訴処分になっても、被害者の不服申立などで起訴されることがある。
また、執行猶予で再度事故を起こすと、前の罪も合わせて起訴される場合がある。
行政処分

交通事故点
交通事故の種別 | 責任の種別 | 点数 |
---|---|---|
死亡事故 | 責任の程度が 重いとき |
20 |
責任の程度が 軽いとき |
13 | |
重症事故 (負傷者の治療期間が 3ヶ月以上・特定の 後遺症が残る場合) |
責任の程度が 重いとき |
13 |
責任の程度が 軽いとき |
9 | |
重傷事故 (負傷者の治療期間が 30日以上3ヶ月未満) |
責任の程度が 重いとき |
9 |
責任の程度が 軽いとき |
6 | |
軽傷事故 (負傷者の治療期間が 15日以上30日未満) |
責任の程度が 重いとき |
6 |
責任の程度が 軽いとき |
4 | |
軽傷事故 (負傷者の治療期間が 15日未満)または 建造物損壊事故 |
責任の程度が 重いとき |
3 |
責任の程度が 軽いとき |
2 |
交通事故の種別 | 負傷者の治療期間 | 責任の程度 | 点数 |
---|---|---|---|
死亡事故 | ー | 重 | 20 |
軽 | 13 | ||
重症事故 | 3ヶ月以上・特定の後遺症が残る場合 | 重 | 13 |
軽 | 9 | ||
重傷事故 | 30日以上3ヶ月未満 | 重 | 9 |
軽 | 6 | ||
軽傷事故 | 15日以上30日未満 | 重 | 6 |
軽 | 4 | ||
軽傷事故 | 15日未満・または建造物損壊事故 | 重 | 3 |
軽 | 2 |
社会的・道義的責任
交通事故を起こした場合、上記の法的責任が問われるだけではありません。
加害者には、被害者に対するお詫びやお見舞いなどできる限りの誠意を尽くす道義的責任があります。
また、従業員が交通事故を起こすと、企業にとっても、イメージダウンや信用失墜による売上減少など大きな損害を被ることになります。
その結果、運転者も責任を問われて一定期間運転業務からはずされる降車処分などを受けることもあります。